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玉川麻衣の作品、日記、展示等のお知らせです。  新しい作品はカテゴリー「ペン画1」に入っております。
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(変な夢をもとに短文的なもの書いて遊ぶシリーズ!
カテゴリー「短文」に入ってます)

「埋葬」



夢を見た。


地面に犬の形の穴がある。
其処へ犬の死骸を抱えた人がやって来て、その穴にはめ込むように埋葬した。
ぴったりだった。
この地方では、生物の死期が訪れると、地面にその個体にそっくりな形の穴が自然に開くのだそうだ。


山道を歩い
て往くと、其処此処に様々な形の穴があった。
おそらくは栗鼠、狸、熊…
野生動物は自らの死期を察して穴に入り込むのだろう。


この道の先には私の形の穴が開いている。
私の穴はどんな様子なのだろう。
晴れやかな気持ちで山道を歩いた。
よく晴れた気持ちの良い日で、草木が鮮やかに輝いていた。



(制作中は眠りが浅くなるらしく、妙に鮮やかな夢を見ます。
死の夢は節目や再生を意味するらしいですね)


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(制作中は、興奮から眠りが浅くなるのか、妙に鮮やかな夢を見ます。
夢を元に、多少創作して遊んでみました。漱石「夢十夜」のまねっこです)


コーティング


夢を見た。


左方から赤ん坊が流れてくる。
ゆっくりと小刻みに停止しながら流れる、灰色のベルトコンベア。その上で、まだ目も開かない丸裸の赤ん坊が仰向けに、短い嗚咽のような息を洩らしながら蠢いている。
ひどく新鮮な皮膚。柔らかで頼りない骨格。全身の血液が透けたようなその赤。
こんなに無垢な肌は、ただ存在するだけで痛くてたまらないのではないかしら。


私の職場は大きな工場の一角にある。
小さな町くらいある敷地の外れに位置する一棟、小学校三つ分くらいの広さの、地上五階建ての建物。その地下二階の一室。地下何階まであるのか私は知らない。
作業場の天井は闇に紛れてしまうほどに高く、前後左右もまた視界に収め切ることが出来ない。
見渡す限り、金属板と管、歯車、滑車等が縦横無尽に巡っている。其処此処に小さな緑や赤のランプが点滅し、機械の作動音が反響する。
作業場所以外の電灯は最低限まで落としてあるのでよく見えないのだが、音の響き方から、かなりの広さであるように思われる。


私の持ち場は私一人である。
日勤の定時となり夜勤の人物と交代する時と、機械に不具合が起こった時にメンテナンス担当の人物がやってくる以外、この階で他の作業員と顔を合わせることはない。
九時から二十時が私の勤務時間である。夜勤の定時は二十時から八時で、八時からの一時間はメンテナンスのためラインが止まるらしい。
週五日、朝八時三十五分に着くように自転車で出勤し、ロッカールームで作業着に着替え、五十分までに持ち場に入る。
業務員用のエレベーターで地下二階へ降りるのだが、下降時間はやけに長く、一体どれほどの距離を降りているのか見当がつかない。
十二時からの四十五分間と十六時三十分からの十五分が休憩時間なのだが、私はそのまま持ち場で過ごしている。持参した弁当を食べ茶を飲み、本を読む。グミや干し梅などの菓子を口にすることもある。
工場内には休憩室や喫煙所もあるが、煙草は止めたし、わざわざ移動する時間も惜しいし、人と接するのは面倒だ。


赤ん坊が私の目の前に来た。
下にあるスイッチを押してベルトコンベアを一時停止する。椅子から立ち上がり、傍らの大釜に向かい、自分の背丈ほどの木箆を握る。 純白で甘い香のする液体を、底から大きく掻き混ぜる。濃度、光沢、滑らかさ、香り…いつも通りだ。抜かりはない。口元が自然にほころぶ。
私は赤ん坊を釜に投入した。


赤ん坊はゆっくりと沈んでゆく。
底に着いた頃合いを見計らって、木箆を動かす。底をこそげるように、ゆっくり丁寧に。箆や鍋肌で赤ん坊が傷付くことがないように。白い液体の表面に赤ん坊が浮かび上がりまた沈む。
繰り返すうちに、赤ん坊の真っ赤な皮膚は白みを帯びて、柔らかな薄桃色へと変化してゆく。
これでよし。
頃合いを見極めて赤ん坊を引き上げる。丁寧に迅速に木箆ですくい上げ、隣の作業台へ仰向けに寝かす。天井から伸びている蛇腹の筒が、三方向から緩い風を吹き付けている。
被膜が乾いて固まる前に手早く、綿棒でもって鼻孔と耳孔と唇を拭ってやる。閉じないように。瞼はまだいいだろう。
筒の角度をそれぞれ変えつつ、丁寧に迅速に赤ん坊を乾かしてゆく。
指の又、耳の後ろ、脇の下、尻の狭間…一通り乾いたら、塵取りくらいの大きさのステンレス製の箆を手に、赤ん坊を作業台から剥がしにかかる。
一番緊張する作業。赤ん坊の背を傷付けることがないように。コーティングが剥がれ落ちることがないように。
以上の作業を静かに抜かりなくこなし、赤ん坊をまたベルトコンベアに乗せてやる。
これでよし。
ベルトコンベアを再び作動させ、心なしか以前よりも穏やかになったような息を吐きながら運ばれてゆく薄桃色のつるりとした赤ん坊を見送りながら、息をつく。


これで大丈夫。君は外界の風に晒されてもひとまずは傷付くことがない。多少窮屈に感じるかも知れないが、なに、このコーティングは君が成長したら自然に剥がれ落ちてしまうよ。
何なら剥がして食べたっていいんだ。格別贅沢なものではないが、手に入る範囲で最良の、誠実なホワイトチョコレートとミルクで出来ているのだから。


全ての赤ん坊は護られるべきだ。 「世界は君を肯定しているよ」という甘やかな呪符。大人になってミルクチョコレートの味を忘れても、鼻孔の奥にその香りの記憶が残ればいい。
全ての赤ん坊をコーティングすることは到底無理だが、私の前に運ばれてきた赤ん坊には、全力で誠実に手際よく、それを行うつもりだ。

夢の中で私は赤ん坊コーティング技師であった。
私は自分の仕事に誇りを持っている。

黒に纏わる夢二つ。


「素敵な黒」


夢を見た。


見渡す限りの草原を、強風が絶えず吹き抜けてゆく。
私は小高い丘に立ち、簡易な作業台を組み立てて、銅版画を制作していた。
風を受けて、私の中から色が吹き飛ばされる。
虹色の帯のように、後頭部や背中から抜けてゆく。
色が希薄になるのに比例して、黒がどんどん濃くなった。


やがて板上の腐蝕止めも吹き飛ばされて制作続行が不可能となり、私の中には黒が残った。
とろりと濃厚で艶々した、素敵な黒。
愛しい黒。
作業台もニードルも吹き飛ばされたが、私と黒は揺らがなかった。



「犬マフィン」


夢を見た。


友人宅からの帰り掛け、イングリッシュマフィンをひとつ手渡された。
全粒粉でできた、やけに熱いマフィンだった。
帰宅して切目を開くと、中から黒いボルゾイが二頭現れた。


二頭はマフィンをたいらげて、部屋の中を駆け回る。
途方に暮れて友人に電話を掛けようとして気が付いた。
私は彼女の連絡先を知らない。
仲良しだと思っていたのにがっかりだ。
ボルゾイは六畳間で黒々と艶めき、一頭が右足に飛び付いてきた。



夢を見た。



夜半に知人が訪ねて来た。

近くへ来る用事があったので寄ってくれたのだそうだ。

随分と久し振りだし、その人の来訪を受けるのは初めてであるので、少し驚きながら迎えた。

居間へ通し、「あり合わせでごめんね」と言いながら、たくさん作ってあった南瓜の煮物と、もやしと胡瓜と蒲鉾の和え物を皿に盛り、冷蔵庫から発泡酒を出して勧める。

すると知人は料理を素手で掴み、小振りの高坏に盛り直した。

その手付きは妙に不器用で、違和感を覚えた。



「あいつ、本当は狐なんだよ。知っていた?」

知人が、共通の知人の名前を出して言った。

私はちょうどその人物に対してちょっとした不信感を抱いていたので、名前を聞いて驚いた。

「あいつが昔よく作っていたアクセサリー、あれには自分の毛を使っている」

そのアクセサリーは私もひとつ持っているが、くすんだ青と緑の柔らかい毛糸製である。



知人は立ち上がって台所へ行き、小鍋で発泡酒に燗を付け始めた。

驚いて止めると、「いいんだよ」と笑う。その顔には妙に品がない。

そういえばこの知人、会うのは十年以上振りだろうか。

容姿が私の記憶にあるそのままである。

不思議に思って見つめると、ピントが外れるように、顔立ちが少し曖昧になった。

そういえばご結婚されてお子さんもいらっしゃるのではなかったか。

そもそも私とは来訪を受けるような間柄ではなかったはずだ。



私が不審を募らすほどに、知人の姿は曖昧になる。

高坏に直接顔を寄せて食い散らす。高坏を倒してしまい机を舐め回す。

その姿は人よりも、獣に似ているように思われた。

小学校の大山羊小山羊
 
 
夢を見た。


私は小学校に忘れ物をしてしまった。
土曜の夜に気が付いた。
手を入れて月曜に提出せねばならない。
取りに行かねばならない。
 
 
どうしよう。
誰もいない学校へ入り廊下を歩いて教室へ…
考えただけで腹の内が冷たく縮こまる。
咄嗟に母に相談しようと思ったが、高齢の母を無理に起こすわけにはいかない。
そうだ。私は既に小学生ではなかったのだっけ。
 
 
日曜の朝の町は静まっていた。
正門の隣の酒屋もまだ開いていない。
門の脇の松の木は、私が通っていた頃よりもだいぶ育っているようだ。
重い鉄の門をよじ登って超え、ロータリーへ向かう。
 
 
ロータリーにあった植え込みはなくなり、アスファルト敷きの地面が広がっていた。
中央に大きな白い布が落ちている。
汚れてはいないが乱れた様子で、金属製の細長い棒が何本も乱雑に突き出ている。
倒れたテントのようだ。
近寄ると、布の彼方此方に「PTA」「本部」「○○年度OB」などの文字が見えた。
複数の布を張り合わせてあるらしい。
 
 
目の前で布が動き始めた。
音もなくするすると持ち上がり、金属の棒も集まって立ち上がり…テントの形が組み合がる。
薄曇りの空を背景に、三階建ての校舎と同じくらいの高さの、絵本に出てくるサーカスのそれのような三角錐のテントが現れた。
テントは少しの間静止して、今度は布だけが更に持ち上がる。
テントの中で蹲っていた生き物が立ち上がり首を擡げるようだ。
布が滑り落ちると中から、巨大な白山羊が現れた。
 
 
校舎の屋上が山羊の肩辺り、前足にベージュの作業ズボンを穿いて、頭には郵便配達夫のような帽子を被っている。
口元は薄桃色の皮膚が透けて柔らかく微笑み、眼は円らに此方を向いているのだが、横長の細い瞳孔が何処を見ているのかわからない。
大山羊は私に向かって可憐に小首を傾げると、前足の片方を大きく振り上げた。

 
呆然と見上げる私に影が落ちる。
巨大な蹄が近付いて来る。
ちょっと待て、近過ぎないか?
全身が竦み上がる感覚に我に返り駆け出すと、すぐ背後に重い振動。
見上げると山羊は、踏み下ろした足に体重を掛けてもう片方の前足を振り上げている。
踏み潰す気か。
 
 
全力で走った。
大山羊が追い掛けてくる。
口元は柔らかく微笑んだまま、時折小首を傾げて、瞳は相変わらず何処を見ているのかわからない。
いつの間にか校庭に出ていた。
校門と反対方向へ逃げてきてしまったことに焦る。
しかしそのうちに慣れてきた。
大山羊の一足は重いが、さほど速いわけではなく、狙い方に捻りはない。
落ち着いて行動すれば逃げ切れそうである。
そうだ、このまま裏庭の方へ逃げて裏門から出よう。
 
 
その時、裏庭へ続く校舎の陰から白いものが現れた。
結構な速さで近付いて来る。
小さな白山羊だった。
まだ頼りない骨格にあどけない表情。
薄桃色の皮膚が透ける腹を此方へ向けて前足を突出し、後足はキャタピラになっている。
頭は私の胸くらいで、「山羊型戦車」のような姿。
腹と同じく薄桃色に透ける口元は柔らかく微笑み、眼は円らに此方を向いているのだが、横長の細い瞳孔が何処を見ているのかわからない。
 
 
あっという間に近くに来た。
きゃりきゃりと鳴るキャタピラは恐ろしく小回りが利き、野生の小魚のように大山羊の足の間を縫って私を追う。
小山羊に気を取られていたら大山羊に踏まれそうになった。
二頭で追い詰める気か。
 
 
全く余裕がなかった。
全力で必死に逃げた。
正門の方にも裏門の方にも行くことが出来ない。
 
 
ふと思った。
私は何を忘れたのだっけ。
数学のノート?そうだ、月曜には数学のテストがあるのだった。
いや待て。私は数学のノートを取っていない。
数学の授業にすら出ていないではないか。
私は一体何年間、数学の授業をさぼり続けているのだろう。
どの辺りが出題範囲であるのか見当もつかない。
 
 
いや違う。忘れたのは体育着だったか?
そうだ、ゼッケンを付け直さねばならないのだった。
適当に書いて縫いつけたらば、うっかり水性マジックを使ってしまい、数回の洗濯ですっかり落ちてしまったのだ。
いや待て。ゼッケンに何と書けばいい?
クラス、出席番号、ID…私は何かしらの所属番号などを持っていたか?
 
 
校舎の窓が夕焼けに染まっている。
私のクラスは何処だっけ。いやそもそも…
飼育小屋が目に入る。
飼育当番ではなかったはずだ。
だがしかし、家で飼っている十姉妹、私はあれにもう何年餌をやっていないだろう。
 
 
大山羊小山羊は追ってくる。
白い毛並みが茜色に染まり、相変わらず口元は微笑んで、時々小首を傾げ、瞳は何処を見ているのかわからない。
 
 
下校を促す音楽が鳴り始めた。
帰らねば。でも何処へ?
この町に私の住居はない。
近所に住んでいた祖母も今はいない。
私は何処に住んでいたのだっけ。
帰り道を思い出せない。
忘れ物を持ち帰らねばならないのに。
 
 
山羊の瞳が怖かった。
とにかく逃げた。
半泣きで逃げた。



(いい年こいて時々この手の夢に魘されます)
プロフィール
HN:
玉川麻衣
年齢:
39
性別:
女性
誕生日:
1977/05/08
職業:
絵描き
趣味:
酒、読書
自己紹介:
ペン画を制作しています。 詳しくはカテゴリー「プロフィール」よりご覧下さい。

連絡先→tamagawa10@hotmail.com
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