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玉川麻衣の作品、日記、展示等のお知らせです。  新しい作品はカテゴリー「ペン画1」に入っております。 個展 7月:八犬堂ギャラリー(京橋) 10月:ストライプハウスギャラリー(六本木)
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夢を見た。



夜半に知人が訪ねて来た。

近くへ来る用事があったので寄ってくれたのだそうだ。

随分と久し振りだし、その人の来訪を受けるのは初めてであるので、少し驚きながら迎えた。

居間へ通し、「あり合わせでごめんね」と言いながら、たくさん作ってあった南瓜の煮物と、もやしと胡瓜と蒲鉾の和え物を皿に盛り、冷蔵庫から発泡酒を出して勧める。

すると知人は料理を素手で掴み、小振りの高坏に盛り直した。

その手付きは妙に不器用で、違和感を覚えた。



「あいつ、本当は狐なんだよ。知っていた?」

知人が、共通の知人の名前を出して言った。

私はちょうどその人物に対してちょっとした不信感を抱いていたので、名前を聞いて驚いた。

「あいつが昔よく作っていたアクセサリー、あれには自分の毛を使っている」

そのアクセサリーは私もひとつ持っているが、くすんだ青と緑の柔らかい毛糸製である。



知人は立ち上がって台所へ行き、小鍋で発泡酒に燗を付け始めた。

驚いて止めると、「いいんだよ」と笑う。その顔には妙に品がない。

そういえばこの知人、会うのは十年以上振りだろうか。

容姿が私の記憶にあるそのままである。

不思議に思って見つめると、ピントが外れるように、顔立ちが少し曖昧になった。

そういえばご結婚されてお子さんもいらっしゃるのではなかったか。

そもそも私とは来訪を受けるような間柄ではなかったはずだ。



私が不審を募らすほどに、知人の姿は曖昧になる。

高坏に直接顔を寄せて食い散らす。高坏を倒してしまい机を舐め回す。

その姿は人よりも、獣に似ているように思われた。

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来客
とうとう狐がきたんですね。面白いのは人の不信感を見透かしたかのように共通の知人を狐だというところ。「おいおい、お前だろ!」って。正体を見極めようとすればするほど其のものの輪郭が曖昧になっていくというのはまさに夢の特徴ですね!
玉井 2013/06/07()16:51:56 編集
はい!
ついにお越しいただけました!(^-^)
私が生まれて初めて欲しがった絵本は安野光雅さんの「きつねのざんげ」なのですが、これは嘘と偽善がテーマでして…(たぶん私は意味もわからず美しい絵に惹かれてのでしょう)「狐=嘘つき」というイメージがあるのかも知れません。
「狐」や「妖」は、人の心の薄暗い部分にさりげなくしゅるっと入り込んでくるように思うのです。
玉川 2013/06/08()10:10:38 編集
プロフィール
HN:
玉川麻衣
年齢:
46
性別:
女性
誕生日:
1977/05/08
職業:
絵描き
趣味:
酒、読書
自己紹介:
ペン画を制作しています。 詳しくはカテゴリー「プロフィール」よりご覧下さい。

連絡先→tamagawa10@hotmail.com
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