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玉川麻衣の作品、日記、展示等のお知らせです。  新しい作品はカテゴリー「ペン画1」に入っております。 個展 7月:八犬堂ギャラリー(京橋) 10月:ストライプハウスギャラリー(六本木)
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初めての巡礼は、なんというか、心地よくて静かに愉快だった。
ただひたすらに、歩き、お参りをする。
時折「私、なにしてるんだろう」「いやだからお参りでしょ」などと脳内で一人会話をしつつ、次の札所を目指す。
こんな機会がなければ通ることはないだろう、なんでもない山道、民家の裏、田圃。
道端に花が咲いていたり。
段々と頭の中がシンプルになる。


意味や目的や結果等に縛られることなく何かに打ち込む、てなかなかに贅沢だと思う。
また目的地に着くことで得られる小さな達成感。
次の札所はどんな?という好奇心。
お参りをしている…心身にちょっと良いことをしているような、安心感。
古からのたくさんの先人たちの、優しい気配。
(そう。巡礼道にも札所にも人の気配があるのだ。昔も今も生活に寄り添って大切にされているのだな、という、体温のような)


ここで俄に、そもそもの基本的な事が気になってきたもので、大雑把に調べてみました。


○巡礼とは
寺社など聖地・霊場(=霊験あらたかな場所)を参拝して巡ること。
札所とは仏教の霊場。(古くは参拝の証しとして木札を打ち付けた)
札所巡礼は、弘法大師(空海)の足跡を巡る四国八十八ヵ所(=遍路)と、観音霊場を巡るものが主。


○観音さまとは
観世音菩薩、又は観自在菩薩。
衆生の「音」=声をあまねく「観」て「自在」に救う、慈悲の菩薩。
現在人気のあるお経…般若心経と観音経の、主人公はどちらも観音さま。て例を引くまでもなく、広く親しまれ信仰されていますよね。
災難を取り除いて幸運を授けてくれる、という現世利益。
その優しげなイメージから、(仏に性別はないし元々は男性だったらしいけど)女性的・女性の姿で表されることが多い。
(なんつぅか、わかりやすくて「お母さんぽい」ところが人気なのではないかしら)


六道(=地獄、餓鬼、畜生、阿修羅、人、天。仏教的世界観。魂はここを輪廻して巡る)すべてに姿を変えて現れて(=六観音…聖観音、千手観音、馬頭観音、十一面観音、不空羂索(ふくうけんじゃく)or准てい観音、如意輪観音)衆生を救い…全部で三十三の姿に変化する。
坂東、西国の札所が三十三ヵ所なのはここから。
合わせて百とするために、秩父に一ヵ所加えられ、三十四ヵ所となったのだって。


○歴史
巡礼という習慣は、平安中期に始まったらしい。
当時は修行・苦行的な意味合いが強く、信仰心の発露や願掛けとして行われたり…
そのうちに宗教的な習慣となり、村等の共同体によっては(成人や共同体の一員となるための)通過儀礼と定められたり。
それが江戸・元禄の頃、世の中が落ち着いて、交通網が発達(…街道の整備、宿泊施設の充実、馬・駕籠等の営業化など)したり、治安も景気もよくなって…
行楽の要素が加わって、広く民衆に親しまれるようになったのだそうです。
農民層で特に盛んで(農閑期があるから出易かった)、信仰の旅ということで規制もされにくく、日常や身分から解放される…
庶民にとっては一世一代の娯楽であったとか。
(江戸庶民はお参り好き。時花(はやり)神と呼ばれ、時折特定の神社や木などが流行して参拝者が殺到し、また廃れたのだって。同時の神仏は、今でいうならメディアやファッションなのかしら)


…以上、付け焼き刃の巡礼豆知識でした。


私は何故、巡礼したいと思ったのだろう。
ストレスを発散して自律神経を整えたかった。
日頃使い過ぎている目・肩・腕を休めて、使い足りない足腰を使いたかった。
現在の住居から比較的楽に行ける秩父に興味があった。
…という理由もあるのだけれど、要するに…
日常から離れ、観音さまに会いたかったのだ。
ちょいと疲れて弱気になっちまい、なにか大きくて慈悲深い存在に甘えたくなったのだ。


(私は日頃、女子たるもの責任転嫁泣き言まかりならん、後悔自己憐憫無益、四の五の言わずに描くべし進むべし、と戒めているのですが。このとこいろいろあって少ししんどくなり…)


札所札所の本堂の奥で、境内の片隅で、観世音菩薩は凛と優しげに佇んでおわした。
歩きながら心中で泣き言を並べてみようと思うのだけど、何が言いたかったのだか思い出せない。
(この世には本当に膨大な人々が居て、膨大な生活が人生があるわけで。古から現在まで、本当に膨大な人々が、それぞれの思いを抱いてこの道を歩いたわけで)
(現在に集中すると、過去も未来も影が薄くなりますやね。囚われてはいけない。自分が生きるのはどこまでも現在であるわけで)
心身に詰まっていた古釘のようなあれやこれやが解け始めたら、なんだかシンプルに、絵を描きたいな、と思った。


巡礼の道は同行二人。
四国ではお大師さまが、観音巡礼では観音さまが、同行してくれるのだって。
おデートである。


よしよし。また日常を頑張ろう。
今回巡ったのは十一番まで。
まだあと二十三ヵ所残っている。
いろいろと頑張って、しんどくなったらまた、観音さまに会いに来よう。
昔も今も、きっと人は誰しも不安で、そして大丈夫なのだろう。


 

八番・西善寺にて、紅葉の大木の元におわした如意輪観音。





(参考文献…「地図帖 秩父札所案内」、清水谷孝尚「巡礼と御詠歌 観音信仰へのひとつの道標」、山折哲雄監修「別冊太陽 日本の神」、(学研)「密教の本」、(現代仏教を考える会)「仏教早わかりエッセンス事典」)
(観音信仰について、興味が湧いてきたですよ!)
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プロフィール
HN:
玉川麻衣
年齢:
47
性別:
女性
誕生日:
1977/05/08
職業:
絵描き
趣味:
酒、読書
自己紹介:
ペン画を制作しています。 詳しくはカテゴリー「プロフィール」よりご覧下さい。

連絡先→tamagawa10@hotmail.com
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