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玉川麻衣の作品、日記、展示等のお知らせです。  新しい作品はカテゴリー「ペン画1」に入っております。 個展 7月:八犬堂ギャラリー(京橋) 10月:ストライプハウスギャラリー(六本木)
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営み


夢を見た。


祭りの日。
町には晴れやかなざわめきが満ちている。
祭り装束に身を包んだ人々が連れ立って歩き、着飾った家族連れが道を急ぎ、其処此処の商店からは店主が顔を出し楽し気に辺りの様子を窺っている。


街の一角に廃墟がある。
元は役所であったらしい。
通る人も思い出す人も殆どないその裏庭に、猫科の大型獣の群が居た。
獣達は互いの肉を食らいながら交配していた。


艶やかな毛並みが縺れ合い蠢き、何処から何処までが一頭の個体であるのかわからない。
辺りには、血肉のたてる濡れた音と低い唸り、濁音の混じった息遣いのみが響いている。
ただひたすらに営みが続いてゆく。


交配している獣達から少し離れて、朽ちゆく獣達が居た。
その肉の殆どを失い灰色の消し炭のようになって目を閉じる者。
目を伏せて灰色に変わりつつある者。
既に風化しつつある者。
何れも皆柔らかく優しげな表情をしている。
祭りの出店から出たのであろう塵や、元は提灯・札・紙垂・ポスター等であったと思われる紙片の吹き溜まる中で、静謐な空気を纏っている。


また少し離れて、年若い獣達が居た。
幼年から青年の一歩手前くらいだろうか。
ほやほやと柔らかい暖色の毛並みを寄せ合ってむくむくうずうずと蟠っている。
ある者は朽ちある者は生まれ、群の規模には大して変動がないようだ。


たまに近くを通る人が居るが、獣達を気にする様子はない。
獣も人も、各々の営みに忙しいのだ。


不意に空気が張り詰めた。
獣達が営みを止めて空を仰ぐ。
抜けるような青空に、声なく咆哮し身を振り立てる。
其処此処で毛並みがぱくりと口を開き、薄桃色の肉が覗いた。



溶け合い煙るような毛並みを背景に、艶々と濡れた肉が幽かに震え蠢き、陽を受けてきらきらと光る。
蕩けそうな陽炎の中で咲き誇る大輪の花のようだ。


遠くの喧騒と祭り囃子が幽かに聞こえてくる。
獣達は高らかに、噎せ返るような「生」を主張していた。
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コメント
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ほんとにグロいのは
ぜ〜んぜん、グロくな〜い。
摂食、排泄、交配、死が揃っていない生物こそグロいです。
10string 2012/11/07()14:47:17 編集
たしかに!
人形が生きていたら怖いですね!「生き人形」て怪談、ありましたね…
玉川 2012/11/07()15:26:01 編集
プロフィール
HN:
玉川麻衣
年齢:
46
性別:
女性
誕生日:
1977/05/08
職業:
絵描き
趣味:
酒、読書
自己紹介:
ペン画を制作しています。 詳しくはカテゴリー「プロフィール」よりご覧下さい。

連絡先→tamagawa10@hotmail.com
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