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鶴を捕る
夢を見た。
広くなだらかな丘。
細い草が整然と、斜線を引いたように生えている。
花札の「坊主」を細密画にしたような風景。
其処を駆け回って鶴を捕獲する。
無機質な印象の丘と対照的に、鶴は、瑞々しく力強く…
純白の翼が穏やかな陽に照らされて優しい色味の階調を作り、恐ろしいほどに美しい。
丘に立ち心を鎮めていると、視界の上縁を何やら白いものが滑るのを感じる。
見上げてもまだそれは不定形で。
待っているとやがて地表に影が落ちるので、それを追い掛ける。
途中で見上げるとそれはまた白く霧散してしまうので、地表を滑る鳥の形の影だけを見ながらただひたすらに追い掛ける。
そのうちに頭上に気配が感じられ、それは徐々に近付いて生々しく、恐ろしいようでもあり…
翼が空を打つ音、その羽毛の微細な襞に空気が唸る音までもが聞こえるように思われたところで、飛び付いて、足を掴む。
この瞬間の見極めが肝心なのだ。
か細い両足首を片手に掴んで引き寄せ、胴に腕を回し…
暴れる鶴を、傷付けないように、逃がさないように。
乱雑に扱うと、足や嘴がもげてしまう。
嘴や爪の攻撃から急所を庇いつつ、体全体で鶴を抱え込むように、炊きたての飯の塊を優しく結ぶように…
鶴を小さく丸く、収めてゆく。
結構な時間とあるだけの体力集中力を費やして、鶴を両手の平に乗るような、翼を広げた円形のメダルのような体裁に整える。
両手の間でぽんぽんと厚みを整えて、丘の片隅に広げられた巨大な布の上に、均等な間隔でもってぱちんと嵌め込んでゆく。
このような工程を繰返して、鶴の丸模様の風呂敷が出来上がるのだ。
夢の中で私は風呂敷職人であった。
結構な重労働でしたよ。えぇ。
連絡先→tamagawa10@hotmail.com