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玉川麻衣の作品、日記、展示等のお知らせです。  新しい作品はカテゴリー「ペン画1」に入っております。 個展 7月:八犬堂ギャラリー(京橋) 10月:ストライプハウスギャラリー(六本木)
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夢を見た。


近所の川に釣糸を垂らしたら、小さな蛸が掛かった。
大きさからしてイイダコのようだ。
針を抜いて頭を持ち足を引き抜くと、中から一回り大きい蛸が現れた。


現れた蛸は黄色み掛かって力強い。
手に絡み付いて来るので慌てて地面に落とす。
するとむくむくと成長しながら黄色みを増し、私の膝を少し越えるくらいの黄金色の蛸になった。


連れて帰ることにした。
蛸は足の一本を私の手に絡め、にゅるにゅると付いて来る。
蛸に合わせてゆっくりと歩き、時間を掛けて、間借りをしている祖母の家に着いた。


蛸はいつの間にか男児になっていた。
三・四歳くらいだろうか。私の手にぶら下がるようにくたりとしている。
抱き上げて家に入る。
疲れているようなので早く寝かせてやらねばと思うのだが、この日は親戚たちが大勢泊まりに来ていたため、どの部屋どの布団にも空きがない。
私の部屋に寝かすことにした。


男児を抱えて布団に入り、頭の下に腕を差し込んでやった。
いつの間にか七・八歳くらいに成長している。
顔を見ると、やけに美しいので驚いた。


目が合うと、男児はすくりと首をもたげ晴れやかに微笑んだ。
そして、自分は神である、と言った。
続けて、私はもっと人を描くべきだ、と。


え?人ですか?ええと…人物画にも挑戦したいのだけど、その前に人体を…あれとあれを描いて…でもあれの前にこれを描いてから…
などと慌てて思い巡らせていると、男児が口に手を突っ込んできた。
白く細い指が無遠慮に口内を掻き回す。
するとかしゃりと音を立てて三本の歯が抜けた。


しまった!
慌てて立ち上がり、両手で口を押さえた。
男児の姿は何処にも見えず、蛸の姿もない。
どうやら「してやられた」らしい。


私は立ち尽くし、口内の喪失を噛み締めた。



(説話的に表現すると、「捕らえた蛸に歯を盗られしこと」とかになるのかなぁ。なんか、悔しい)
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営み


夢を見た。


祭りの日。
町には晴れやかなざわめきが満ちている。
祭り装束に身を包んだ人々が連れ立って歩き、着飾った家族連れが道を急ぎ、其処此処の商店からは店主が顔を出し楽し気に辺りの様子を窺っている。


街の一角に廃墟がある。
元は役所であったらしい。
通る人も思い出す人も殆どないその裏庭に、猫科の大型獣の群が居た。
獣達は互いの肉を食らいながら交配していた。


艶やかな毛並みが縺れ合い蠢き、何処から何処までが一頭の個体であるのかわからない。
辺りには、血肉のたてる濡れた音と低い唸り、濁音の混じった息遣いのみが響いている。
ただひたすらに営みが続いてゆく。


交配している獣達から少し離れて、朽ちゆく獣達が居た。
その肉の殆どを失い灰色の消し炭のようになって目を閉じる者。
目を伏せて灰色に変わりつつある者。
既に風化しつつある者。
何れも皆柔らかく優しげな表情をしている。
祭りの出店から出たのであろう塵や、元は提灯・札・紙垂・ポスター等であったと思われる紙片の吹き溜まる中で、静謐な空気を纏っている。


また少し離れて、年若い獣達が居た。
幼年から青年の一歩手前くらいだろうか。
ほやほやと柔らかい暖色の毛並みを寄せ合ってむくむくうずうずと蟠っている。
ある者は朽ちある者は生まれ、群の規模には大して変動がないようだ。


たまに近くを通る人が居るが、獣達を気にする様子はない。
獣も人も、各々の営みに忙しいのだ。


不意に空気が張り詰めた。
獣達が営みを止めて空を仰ぐ。
抜けるような青空に、声なく咆哮し身を振り立てる。
其処此処で毛並みがぱくりと口を開き、薄桃色の肉が覗いた。



溶け合い煙るような毛並みを背景に、艶々と濡れた肉が幽かに震え蠢き、陽を受けてきらきらと光る。
蕩けそうな陽炎の中で咲き誇る大輪の花のようだ。


遠くの喧騒と祭り囃子が幽かに聞こえてくる。
獣達は高らかに、噎せ返るような「生」を主張していた。
谷崎潤一郎「陰影礼讚」について熱く語る夢を見た。
陰影や隈に、日本の美が宿る!
夢の中の私は、長々と情熱的に、しつこく語っていた。


目覚めてからも妙に鮮明で気に掛かり。
なんだろう、再読してみようかしら…などと思ううちに、気が付いた。
そうだ。絵にもっと陰影をつけろ、てことだ!


今まで薄墨で描いていた部分に、液墨の原液でもって線を入れた。
数ヶ所に濃い目の墨で隈を描いた。
すると、今まで感じていた停滞感がするすると解け、絵が動き始めた。
なるほどなぁ。


私の頭の中、無意識の辺りに、構成担当者が居るような気がする。
私は下請けの肉体労働者であるような心地がする。
ここのところ、始終脳味噌が重くてくらくらする。
なかなか目覚められずに十時間ほど就寝してしまい、やたらと鮮やかな長い夢を見て、起きるとぐったりと疲れている。
きっと、構成の山場なのだろう。


構成の大組みが出来上がると(その時は大概、口が勝手に「出来た!」と大声を出して左の拳が天に突き上がり、自分で自分に驚く)ろくに眠れなくなってしまうから、今は出来るだけ寝て、バランス良く食べ運動し、体力を蓄えておくべきなのだろうなぁ。


おそらく、最後の峠は近い。
龍虎相打つ図を描いている。
龍虎=天地。
天地万物を盛り込みたい。


そのためにはどうしたらよいのだろう。
とりあえず思い付いたのは、自分の小ささを認めて恥じず、全身全霊を開いて力の限りに天地を思い、「大好き!愛してるーー!!」と叫び続けることで。
他に何も思い付かないのでとにかくそれを試みておるのですが。
やぁぁ。消耗するなぁ…


まぁしかし。消耗しない制作などないわけで。
絵に食らわれることは絵描きの喜び。
出来るだけたくさん食らってもらえるように体力作りとメンテナンスに励むべきであるのだろうなぁ。


ここのところ、時間の感覚が曖昧になっているようだ。
絵から離れるとふわふわくらくらと心許なく、絵の中の方が確かな世界であるように感じる。
制作酔いをしている。
やけに鮮やかな夢を見る。
幾つか面白いものがあったので、そのうちに書いてみよう。


「心のお山」にだいぶ登って来ているようだ。
まだまだ先は長いが…
とにかく一歩、一歩だ。
この道が何処に続くかはわからない。
絵が仕上がるという保証もない。
それでも、この道の他には何も見えないしなぁ…


とにかく、描こう。進もう。叫ぼう。
大好きです!愛しています!私の持つものは全て捧げます。全身全霊であなたを愛します。だから…
どうかどうか、描かせてください!


私は今、天地を口説いている。
天地を、創造してやろうじゃないか。
このペンで!この紙の上に!
プロフィール
HN:
玉川麻衣
年齢:
47
性別:
女性
誕生日:
1977/05/08
職業:
絵描き
趣味:
酒、読書
自己紹介:
ペン画を制作しています。 詳しくはカテゴリー「プロフィール」よりご覧下さい。

連絡先→tamagawa10@hotmail.com
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