祖母の手

祖母の手を描いている。


介護施設に入居している祖母は、認知症で…
ここ最近訪ねた時には私のことをあまり覚えていない様子であったので、多少の不安を抱えながら、クロッキー帳を手に訪ねた。
しかし、モデルの依頼をしたら二つ返事で引き受けてくれて、全面的に協力してくれた。
(薬の時間にも看護師さんの手を借りて全く動かずにいてくれて、消灯時間が近付いても欠伸を噛み殺して描かせてくれた)
そして看護師さんに私を「孫です。絵描きなんです」と紹介してくれて、
(前回訪ねた時には母を「従妹です」と言っていたのに)
「個展が出来るようになったの。よかったわねぇ楽しみねぇ」と繰り返し喜んでくれた。
(前回は会話が殆ど成り立たず、「アルプス一万尺」などして遊んだのだけど…
その日の体調等によっても認識に差があるみたいだし、そういえば祖母の家に間借りしていた頃の私は家に居る間は殆ど制作していたわけで、ここ最近の「化粧をして落ち着いた私」にピンと来なかったのかも知れない)



おそらく私は、たくさんいる孫の中でもとりわけ可愛がってもらった方だと思う。
そして、認知症に罹ってからは、一番か二番くらいに辛く当たられたのではないかしら。
(甘え、のようなものだったのだろう)
当時は病気以外にも様々な事情があって、本当にたくさんのことがあったので、まだそれらを言葉にすることは出来ない。
でも、私だから描ける祖母の絵があるだろう。


今の祖母の手は、本当にとんでもなく、美しいのだ。