理想と現実と黄粉棒

悲しいことがあり、また、思い出したくない腹立たしい過去が生々と甦ることがあり、呆然と黄粉棒を食む。
黄粉棒はうまいな。
私は無力だな。
重々わかってはいるのだけども。
私は絵以外のことは大概不得手である。


いい人・やさしい人・立派な人にはなれないが、誠実でいよう。
人の役に立てない代わりに、間違ったことをしないようにしよう。
弱者を打つ者は屑だ。
すべての子供は護られるべきだ。
護ることは出来ないが、決して虐げないぞ。
言い訳陰口人の所為、主体性のない媚嘲笑…
醜い行為も行いたくない。
なかなかそううまくは立ち行かないが、理想・反省・心意気は忘れないぞ。


黄粉棒を食み過ぎて噛み合わせと米噛が痛みだしたので、外に出た。
雪である。
きゅいきゅいと踏み締める気味のよさ。
現実はどこまでも厳しいが、どこまでも美しいのぅ。


気に入りのコート。
つぅかそれしか持っていないのだけど。
モスグリーンの膝丈で、右手首の内に煙草の焼け焦げがある。
そのホックが6コ中3コ、片側の糸が切れて取れている。
修繕するべきなのだが、面倒くさい。
取れたまま着用するのと修繕するのと。
天秤に掛けた結果捨て置いているのだが今日、
裾が開くのを押さえポケットに入れた手を股間の前で掻き合わせて歩く自分の様に思った。
…露出狂みたいだ。
…でも面倒くさい。
どうでもいいんだけどね。


格好悪くても構わないけど、醜くはならないぞ。
真っ当な人でなくても真っ当な絵描きでいるぞ。
しかし雪は美しいな。
はしゃいじまうな。
黄粉棒はうまいな。
コートは修繕せんとな……